初戦の目標
『今日も暑いな〜』
『最高気温は30度を超えるらしいよ』
『ホントかよ』
5月の中頃、春とは思えない気温体育館で部活動をおこなっている部員は蒸し風呂状態の中練習をしている
しかしインターハイ予選が近づいているので必死になって練習を続けている、たった一つの部活を除いて
『ねぇ先輩、そろそろ練習しませんか?』
ここは卓球部の部室、他の部室より場所は遠く離れており
部室内も誰も掃除しないためかゴミが散乱している
先『いや、ダルイから後30分は休もうぜ』
ペットボトルのジュースを飲みながらめんどくさそうに先輩と言われた男は答えた、この部室には二人しかいないようだ
後『それもそうですがやはり予選に勝ってインターハイに行きたいですよ、』
と不安そうに言い部室の奥を指差した、そこにはゴミ同然に置かれた優勝カップと壁に同化してる賞状があった
先『あぁ確かに昔は強かったな、全員メガネかけてたし』
後『えぇ!?メガネ関係あるんですか?』
先『おおいに関係あるって、サーブする時メガネをクイィってできるし』
後『全然卓球の強さ関係ないじゃないですか!!』
先『見た目が強くなりそうなんだよ、実際見た目も実力も強かった、そりゃインターハイ行くなってぐらい』
後『一度は見てみたいですねその先輩たち、来てくれないですかね?』
先『辞めとけって全員キモいぞ、多分未だにイナイ歴=年齢だぞ』
後『先輩は彼女いるんですか?』
先『・・・とりあえず辞めとけあだ名がポッターとかせんべい山って奴とかもいるから』
後『むしろ見てみたいですよ、せんべい山どんな人なんですか』
先『なんつ〜か髪型がマリオに出てくるせんべい山のコクッパに似てる』
後『いや全然わからないですよ、先輩ずっと一人でそんな事考えていたんですか?』
先『そうでもないな、去年の夏辞めた岡田っていただろ、アイツと共同であだ名つけまくってた』
後『あ!!岡田先輩ですか、懐かしいですね』
先『アイツ一年の時ほっぺを攣って保健室に運ばれたからな』
後『何故!?』
先『なんかせんべい山の顔真似しようとしたらしい』
後『どんだけ複雑怪奇な顔してるんですかせんべい山って人』
先『例えようのない顔をしているな、お前みたいな』
後『それはひどいっすよ先輩!』
先『そういえばお前コンビ二に行ったら絶対募金するよな』
後『はい、おつりとか入れますね』
先『前から思ってたよ、だからあだ名は募金魔人な』
後『ひどい過ぎっす!てか俺の事観察し過ぎですよ』
先『わるかったよ、募金魔人ユニセフ』
後『絶対反省してないっすよねそれ!しかも増えてるし!ハァハァ・・・てか先輩そろそろ練習しませんか?』
先『後、少ししてからな』
と言いながら置いてあった漫画を読み始める
後『先輩!予選まで後少ししかないんですよ、僕は後一年ありますが先輩はこれで終わりかもしれないんですよ』
先『もう初戦さえ勝てればそれでいいよ、1回勝ったらそれで俺は燃え尽きる』
後『何言ってるんですか!先輩言ってたじゃないですかインターハイに行くぞって!』
先『それは顧問がいたからで、その顧問がいないようになって・・・』
後『もういいですよ!僕一人で練習してきます』
乱暴にドアを開けて出て行くのをただ見届けるしかできなかった
読んでいた漫画を近くに置き、大きくため息をついた
確かにアイツの言ってることはわかる
けれど
ふと優勝カップを見たホコリをかぶり汚らしかった
立ち上がりその優勝カップについたホコリを掃おうとと近づいたとき、一枚の写真が目に付いた
インターハイ出場の記念撮影でその写真を見ると懐かしい先輩達、日付は2年前で幼い顔をした自分も笑顔で写っていた
『この部活にもこんな時期があったよな』
色々思いをはせる、あの時の先輩達は全員メガネで気持ち悪かったけれど優しかったし、なによりやる気があった
そんな先輩達の背中を見て部活をしていただか今は・・・
そう思うと今のアイツがすごく可哀想だ
先輩は俺だけだし新入生は0人、2年は5人いるが週に2回来るかどうかだ
そんな中アイツは向上心を持って練習に励んでいる
インターハイを狙う後輩に初戦突破という小さい目標を掲げ満足する先輩
アイツに俺の背中はどう見えているのだろうか
そう思うといてもたってもいられなかった、部室のドアを勢いよく開けて練習場まで向かった、そこで後輩が壁うちをしていた
後『先輩どうしたんですか?』
先『ちょっと色々あってな、練習するか!』
後『はい!!もちろんですよ』
目指すは初戦突破ではなくてインターハイ優勝、そんなスケールのでかい心意気が重要なんだと気がついた
(終)